工場の問題を解決に導く 生産管理における実績収集のポイント

タブレットと紙の画像

あなたの工場では、こんなお悩みはありませんか。

  • 在庫の精度が低いため在庫が増える傾向があり、廃棄量が多い
  • 作業負荷が見えないので、仕事をどれだけ受けられるか分からない
  • 現場からは人手が足りないと言われるが、適正な人員配置で解決できないか
  • 実際の歩留が分からないので、適正な作業効率なのかどうか分からない
  • 原材料価格の変動や作業人件費を反映した、正確な製造原価が分からない

これらを解決するためには、現場のデータを実績収集し、集めた実績を生産管理システムなどで整理し、工場を見える化する必要があります。

この記事では、

  • 実績収集の2つの目的
  • 収集するべき5系統のデータ
  • 実績収集する様々な方法とメリット・デメリット
  • 実績収集で問題を解決した実例集

について解説します。

なお、実績データは生産管理だけではなく、品質管理でも必要とする情報ですが、この記事では生産管理についてのみ触れています。

1. 実績収集の2つの目的

実績収集の2つの目的は2つあります。 ひとつは進捗確認、もうひとつは製造現場の業務改善です。

1-1. 進捗確認

実績データを収集することで

  • 今仕事はどこまで進んでいるのか
  • 前工程の状況はどうか
  • 納期通り仕事を終わらせることができるのか
  • 残業が発生しそうか

などを知ることができます。 

もし仕事が遅れているようであれば、人員や残業を増やす、外注に頼むなど、納期に間に合わせる手を打つことができます。
営業担当者からの進捗確認にも、正確かつ迅速に回答できます。 

1-2. 製造現場の業務改善

実績データを収集し加工することで、次のような業務改善が期待できます。

歩留、不良率の改善

理論上の歩留、不良率ではなく、実際に製造した結果としての歩留、不良率をリアルタイムに把握することで、問題への対処を迅速に行えます。
また、現場作業者に数字に基づいた指導を日々繰り返すことで、例えば“作業員の包丁の使い方がうまくなる”などの、現場の作業水準の底上げにも繋がります。

作業人員の最適化

実際にかかった作業時間を分析することで、工程ごとに必要な人員を把握できるようになります。
さらに生産計画と併せて利用すれば、計画達成に必要な人員数を正確に算出できるようになったり、作業進捗を見ながらライン毎の人員割り振りを変更し、遊んでいる作業者が発生しないようにすることもできます。

トレーサビリティ

製品から原料、資材までをたどるとレースバック、原料、資材から製品までをたどるトレースフォワードを実現するためには、ロット情報を含んだ日報情報が欠かせません。

・特定の製品に問題があった時はどのような原料資材を使用したのかを特定する
・特定の原料資材に問題があったことが後から分かった時に、どの製品を回収するべきか特定する

などの対処をすることで、得意先やエンドユーザの安心・安全の実現にもつながるため、トレーサビリティは製造業にとって必須事項です。

企業収益の改善

製品仕様書や規格書、原価計算書に記載する理論原価が実際と乖離していると、どの製品がどれだけ利益が出ているのか、どの得意先から収益が上がっているのかが分かりません。
このような状況が続けば、企業の収益力は低下する可能性が高くなります。
実績に基づく製造原価を把握すれば、適切な売価設定、販売価格の値上げに役立ち、企業収益の改善につながります。

実績収集に際しては、以下の点を必ず留意してください。

  • 何の目的で実績収集をするのかを明確にして、収集するデータは必要最低限にとどめる
  • 収集するデータを決める際には、現場や生産管理部門任せにするのではなく、必ず経営層も関与する

実績収集にはコストが伴います。必要ではないデータまで収集すれば、そのぶんコストが増大します。
「とりあえず実績データを集めておいて、後から考えれば良い」という考えで、製造過程で生じるすべての実績を収集しても結局活用できず、収集する手間と時間が無駄になります。
実績収集は、現場と経営陣が本当に必要なデータかどうかを吟味して実施しましょう。

2. 収集するべき5系統のデータ

生産管理部門に関係する実績データは以下のとおりです。

系統実績データ
完成したモノ(製品、仕掛品)に関する情報出来高
歩留、不良率
完成ロット番号
保管場所
使用したモノ(原料、資材)に関する情報投入量
投入ロット
出庫元の場所
ヒトに関する情報作業人数
作業時間
休止時間
設備に関わる実績稼働時間
停止時間
在庫、棚卸(製品、仕掛品、原料、資材)に関わる情報品目
数量
場所
単価、評価額
入荷完成日時
ロット番号
賞味期限、使用期限
廃棄

3. 実績収集する様々な方法とメリット・デメリット

大きく分けて、手動収集と自動収集に分かれます。

3-1. 手軽に導入できるがデータ収集で問題が起こりやすい、手動収集

紙に手書きで記録したデータを人力で収集する場合、Excelなどの電子データで記録したものを人力で収集する場合です。

メリットデメリット
  • 主に必要なものは紙とExcelなので、新しく導入しなければならないものは少ない
  • 少しの訓練で記録・集計できる
  • 人力の入力・集計なのでミスが起こりやすい
  • 記録・集計ともにタイムラグが生じるので、生産の現状をリアルタイムでは確認できない
  • 字が汚くて読めない、紙が濡れるなど、手書きである・紙であることが原因の問題が起こりやすい

3-2. 導入のハードルは高くなるが正確にデータ収集できる、自動収集

バーコード、ハンディターミナル、タブレットなどの端末、機械のネットワーク接続など、機械を使用して記録したデータを自動で収集する場合です。IoTも自動収集に含まれます。

メリットデメリット
  • 機械を通して記録・集計されるため、正確なデータが得られる
  • 記録・集計ともにリアルタイムに行えるので、常に生産の現状が確認できる
  • バーコードリーダー、ハンディターミナル、タブレットなど、新規に導入しなければならない機械やシステムが手動収集より多い
  • マスタの準備が必要で、実際にやってみると想像以上に手間がかかる
  • 高齢者が電子機器の字が読めないという、可読性の問題が起こる
  • 食品工場の場合、機器破損時の異物混入リスクや、指タッチによる衛生上の懸念がある

3-3. 自動収集導入における注意点

両者を比較した場合、圧倒的に自動収集のほうがのぞましいですが、導入に際してはいくつか注意する点があります。

高齢労働者の電子機器アレルギー

多くの高齢者は、電子機器の利用を嫌がります。
最悪、退職してしまうリスクもあるため、なるべく機械をさわらずに実績収集できる方法を考える必要があります。
たとえば、ボタン一つを押すだけで入力が終了するシステムや、ハンズフリーのマイクで応答した内容を作業記録として保存するシステムなども良いでしょう。

人間が入力する限りはミスが出る

紙をタブレットに代えても、人間が入力する時には間違った情報を入力する可能性は残ります。
そのため、入力時に人間のミスを減らす工夫が必要となります。

数値入力が必要な個所で

・数字以外を入力できなくする
・アラートを出す

などの処置を行う、単価の入力ミスが三週間後に判明した場合は原価等を再計算するなど、ミスへのリカバリ策をあらかじめ考えておくことも必要です。

自動収取を利用する場合は、いきなり自動収集を行わず、まず手動で実績収集をしてみてください。
なぜなら、手動・自動いずれであっても実績収集には業務フローの変更が伴うため、一旦手動で収集して、新しい業務フローに無理はないかを検証する必要があります。
また、自動収集には、高い精度のマスタデータや在庫データが必要です。
マスタが間違った状態で自動収集を行うと、

・現場で登録したい製品が表示できない
・在庫データがおかしいために出るべき指示がでない

といったトラブルが発生し、最悪の場合は現場の業務が止まります。
一方、手動収集の場合は、その場で間違いを手で修正すれば業務が止まることはありません。
ですから、手動での実績収集を通じて、マスタデータや在庫データの精度を上げていく必要があります。

以上の点から、手動収集を自動収集に移行するための準備段階、と位置付けることが可能です。
回りくどいようですが、トータルのマンパワーや時間は少なくて済みます。

4. 実績収集で問題を解決した実例集

最後に、実績収集で問題を解決した当社顧客の例をご紹介します。

食品工場A

【課題】
野菜原体の下処理工程を複数の下請け工場に出していましたが、工場や仕入先JAによって歩留のバラつきがありました。

【改善点】
・製造日報や、仕入伝票に記載された入荷日、出来高などの情報をパソコンに手入力
・原料仕入先と下請け工場の紐づけ
・歩留の可視化、比較、指導

などを行い、下請け工場の歩留改善につなげました。

食品工場B

【改善点】
原料の入荷日報、製造日報、出荷伝票をロットNo.で紐づける
実際の原料単価で原価積算する
製品別損益の把握

などを行い、収益性の低い得意先に対して取引条件の見直しを要求し、価格改定を実現しました。

5. まとめ

実績収集の目的は、「進捗確認」と「製造現場の業務改善」の2つです。
しかしながら、無駄な手間と時間を増やすことにならないように、実績収集を行う際には以下を心がけてください。

  • 実績収集する目的を明確にして、収集するデータは必要最低限にとどめて下さい
  • 収集するデータを決める際には、経営層も必ず関与して下さい

生産管理部門に関係する実績データは、以下の5系統です。

  • 完成したモノ(製品、仕掛品)に関する情報
  • 使用したモノ(原料、資材)に関する情報
  • ヒトに関する情報
  • 設備に関わる実績
  • 在庫、棚卸(製品、仕掛品、原料、資材)に関わる情報

実績収集を行う方法は、手動収集と自動収集に分けられます。
手動収集は、紙に手書きで記録したデータを人力で収集したり、Excelなどの電子データで記録したものを人力で収集します。
自動収集は、バーコード、ハンディターミナル、タブレットなどの端末、機械のネットワーク接続など、機械を使用して記録したデータを自動で収集する場合で、IoTも含まれます。

両者を比較した場合、圧倒的に自動収集のほうがのぞましいですが、導入に際しては

  • 高齢労働者の電子機器アレルギー
  • 人間が入力する限りはミスが出る

などの注意点がありますので、

  • 人間が極力機械を触らないで実績を収集できる方法
  • 入力時に人間のミスを減らす工夫
  • 人間のミスへのリカバリ策

などの対応策が必要となります。

ただし、いきなり自動収集を行わず、まず手動で実績収集をしてみてください。
理由はふたつあります。

  • 手動、自動いずれであっても実績収集には業務フローの変更が伴うから
  • 自動収集には、高い精度のマスタデータや在庫データが必要だから

手動収集で、新しい業務フローに無理はないかを検証し、マスタデータや在庫データの精度を上げることから、手動収集は自動収集に移行するための準備段階、とも位置付けられます。

以上、生産管理の実績収集について説明してまいりました。
あなたの会社での実績収集が、本当に生産管理の役に立っているのかを見直すきっかけとしてお役立て下さい。

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